ハイヒールの底

雨の日の帰り道

駅の階段を下り帰路に向かう

カツコツ

ハイヒールの音がやたら響く

左の靴底が取れていた

再び階段を上り

取れた靴底を探す

見つからない

何度も下を向きながら

来た道をなぞる

でも見つからない

 

たかが靴底

ただそれだけ

たかが靴底

だけどさみしい

くやしい 悲しい

落としたものを

落としたことを

まるでとても大事なものをなくしたような気持になる

なぜだろう

この喪失感